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 唐突に踵《きびす》を返すと、せかせかと出て行ってしまった。  ビブリア古書堂に再び静寂が戻る。俺は肩越しに篠川さんを振り返った。彼女は膝の上の原稿用紙を凝視したまま動かない。なにか考えに耽《ふけ》っているらしかった。  さっきから黙っているのが気になっていた。小菅奈緒の相談に乗った以上、志田とは違う意見を持っているはずだ。そもそも本の話をしているのに、まったく関心を示さないのはおかしい。 「どうかしたんですか?」  声をかけると、彼女ははっと顔を上げて両手を振った。 「い、いえ、別に……ただ、ちょっと……」  妙な沈黙が流れる。ふと、さっきの会話が脳裏をよぎった。 「そういえば、なにか言いかけてましたよね、志田さんが来る前。あれ、なんだったんですか?」  考えてみると、この感想文を読み始めた時から態度が変だった。なにか気になることがあるに違いない。  しばらくの間、彼女は答えに迷っている風だった――やがて意を決したように口を開いた。 「……この感想文ですけど……厳密に言えば、違うんです」 「違うって、どこがですか?」 「内容、です」  彼女は重々しく言った。 「これを書いた人は[#「これを書いた人は」に傍点]、本当の意味で[#「本当の意味で」に傍点]『時計じかけのオレンジ[#「時計じかけのオレンジ」に傍点]』を読んでいません[#「を読んでいません」に傍点]」         4
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