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prada財布リボンピンク編集

 ふとネルが口を開いた。目線はまだ掲示のほうに向けられたままだった。 「……よくやった。おまえはうちの誇りだよ」 「え…」  まったく卑怯《ひきょう》な不意打ちだった。いつもこうなのだ。他のどんな人も……こんなずるいことはしない。ほんとに、ずるい……。  ずっとこらえていたものが一気に目尻からあふれ出し、エルフェールは慌てて人ごみを離れ、トイレに駆けんだ。 [#改ページ]        12  五月——  新学期が始まる九月に向け、学生が研究室配属の希望を提出する時期である。  全国の王立大学卒業者、ならびにそれに相当する学力を有する者(大学院受験資格検定試験合格者や留学生など)のうち、技術院の入学試験を通過した学生。  今年は、総勢四五名。その四五名が、入学試験での成績順に、希望する研究室に配分されていくのだ。  しかしながら、今年のビゼンセツリ研究室には無縁の行事だった。  配属希望学生が皆無だったためだ。 「ゼロですよ、ゼロ! どういうことよ、まったく! こんなに住み心地のいいところなのに!」  ひと月ほど前からせっせとビラ配りなどをして宣伝をしていたエルフェールは、憤然《ふんぜん》としてユウに訴えた。学生向けのガイダンスでも、どれだけ自由でどれだけとことん研究できる環境にあるか、一生懸命力説してきたというのに。だいたい、一国の王女がビラ配りまでして! 「……ガイダンスの席上でからかった学生を、あなたが罵倒したりしなければねえ。ただでさえ若い子はプライドが高くて、女性の下につくのはいやがるのに」
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