gucci 財布 コピー 見分け方
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null「いよいよとなったら、何か仕掛けるしかないな。女でも抱かせるか……」  あきらめ気味に黒崎が言ったのは、つい五時間余り前だった。そのとき伊奈と黒崎は、光洋銀行目黒支店の裏口近くに停めた車の中にいた。猪股が銀行の裏口に姿を現わしたのは、午後七時半ごろだった。伊奈はその後姿を見送って、尾行のために、黒崎の車から降りようとした。猪股がいつものとおり、駅まで歩き、電車に乗るものと思ったのだ。  猪股はしかし、銀行の前の道の角まで行くと足を停めた。タクシーを待つようすだった。伊奈と黒崎は思わず眼を見交した。尾行五日目にして初めて現れた変化だった。  猪股は案の定タクシーに乗り、銀座に向い、数寄屋橋の交差点で降り、並木通りのレストランに入って行ったのだ。伊奈は黒崎の車を降り、レストランの中をのぞきに行った。レストランは古いビルの二階にあった。伊奈はドアを押して中に入り、レジの台の前で人を探すふりをして店内を見回した。猪股は奥の壁ぎわの席で女とテーブルをはさんで向き合っていた。  いま、猪股はその女と湯島のラブホテルに入っている。黒崎はそのラブホテルの、小暗い明りをつけた門の近くに車を停めていた。伊奈は助手席の窓をいっぱいにおろして、いつでもカメラを向けられるようにしている。  猪股の相手の女の素性はまだ判らない。だが、女が猪股の妻でないことだけははっきりしている。妻子のある猪股にとって、相手の女とのことは、人に知られたくはないはずである。猪股を窮地に立たせるための材料としては、必ずしも一級品とは言えないが、使えないわけではない。伊奈と黒崎は、小さいながら、獲物をつかめたことに満足していた。  車を停めてから小一時間したころ、黒崎が低い声で言った。 「退屈しのぎに、詰まらない話を一つしようか……」 「なんだい?」  伊奈も小声を返した。 「いまごろ、あのホテルの中のどこかの部屋じゃ、猪股とあの女がベッドの上で、なんて思うと肚が立ってきたんだ」 「仕方がないだろう、そんなことで肚立てたって……」  伊奈は小さく笑って言った。 「ちがうんだ」  黒崎はホテルの門に眼を向けたまま、小さく首を振った。 「おれが肚を立てたのはそういうことじゃないんだ。警察手帳さえあれば、銀行の守秘義務なんてめじゃないのに、それがないばかりにラブホテルの前で張り込みやんなきゃならない。それが口惜しかったのさ」 「それも仕方ないよ。おれもあんたも、警察の手を借りるのがいやなんだから……」 「刑事としてのおれの最後の仕事も、ラブホテルの入口での張り込みだったんだ」