激安グッチ長財布
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null お代わりした水も飲み干し、長瀬はようやく重力を取り戻《もど》したように落ち着く。酔《よ》ったような赤ら顔も肌色《はだいろ》を職場復帰させ、素面《すめん》の長瀬になる。そこで、僕は少しだけ真面目《まじめ》に話した。 『あーっとさ、ごめん』 『急にどうしたッスか?』 『いや、デートとして成立してない気がするから』  長瀬は目を丸くし、その後は曖昧《あいまい》に笑って『まあそうッスねー』と頷《うなず》く。 『デートに、長瀬の求めるものが全然なくてさ。もうちょっと行き先とか考えとけば良かったなって』  何しろ、昨日の午後十一時にメールで打ち合わせして、十二時間後に会っているのだから。  長瀬はグラスを振《ふ》り、氷の音を鳴らしながら、『そうッスねえ』と言って、 『お洒落《しゃれ》とは無縁《むえん》ッスね。でも焼きうどんは美味《おい》しいし、バット振《ふ》るのも楽しかったから、これで十分満足してる』  長瀬《ながせ》は満ち足りた笑顔《えがお》で肯定《こうてい》する。素振《すぶ》りが娯楽《ごらく》になるなら、ソフトボール部への入部を勧《すす》めようかとも一瞬《いっしゅん》、悩《なや》んだ。けど場の空気を読んで口外には進出させなかった。 『そか。じゃあ、いいんかな』『ッス』  さっきまで愚痴《ぐち》ってた気がしたけど、今は本当に楽しそうだ。不思議な子だな。 『ま、今回は良いッスけど、次回はギンギラギンな感じでよろしくッス』 『……さりげなく善処《ぜんしょ》するよ』  長瀬が水のお代わりを貰《もら》い、暫《しばら》くは雑談に興じた。  その途中《とちゅう》、こんな話題になった。 『透《とおる》は地元の大学に行くッスか?』  長瀬は、行くことを前提にした質問をしてきた。なので、僕は返答に淀《よど》みがあった。